第1回コネクテッド・インダストリーズセミナーを開催しました

中小企業にとって人手不足とそれに伴う経営の持続性の確保が大きな課題となっています。

このような中、収益力の拡大を図り、付加価値を増大させていくための解決策のひとつとして、

製造現場やオフィス業務において、IoT・RPAの活用による取り組みが進んでいます。

そこで、『IoTとRPA』をテーマに、実際の活用例やその準備、種類など、具体的にお話しいただきました。

 ※RPAとは・・・事務所内で行われている業務において、従来人間がPC操作で行っている業務を自動化すること。

   「製造業をスマートにするIoT編」  ~中堅・中小製造業の身の丈AI/IoT

講師:ウイングアーク1st株式会社 エヴァンジェリスト 

         大川 真史氏

 

講演内容の要旨は以下の通りです。

昨今のAIやIoTは、面白い活用をされている中堅中小企業や個人の方が多く、その事例を紹介します。

 

・ある加工工場では、加速度センサ計が搭載されているスマホ(デバイス)を設備に貼り付け、作業場の可視化を図りました。その結果、作業効率の悪い時間帯がわかり、現場か

 らの改善提案により、生産性が向上したうえ、設備動作情報収集アプリの開発、販売まで至りました。

・ある製造業では、社長がCOBOLというプログラム言語を勉強し始め、製造システムを作成し、PCが使えないパート職員のため、バーコードリーダーや不要なキーを抜いたキー

 ボードを設置しました。部外者にはおかしく感じられるかもしれませんが、現場の職員にとっては、やり易く最適だということです。

・あるキュウリ農家やクリーニング屋では、仕分け・分類を楽にするため写真を2~3万枚撮影しました。画像解析には、より多くのデータが必要ということで撮影したとのことで

 す。

・ある薬局のオーナーは、35歳でプログラミングを始め、陳列棚への配置を検討したり、毎月の棚卸時に声で入力をするAIアプリを開発しました。両手を自由に使いながら入

 力が出来るだけでなく、使用量の予想までしてくれる様子をSNSにアップしたところ、同業者からの反響が大きく、その意見や要望を受け翌日に改良し、外販にも至りました。

 薬局向けシステムの業者からは危機感を持たれることもあるようですが、業界をつぶそうとしているのではなく、純粋に現場を改善したいという気持ちから、日々

 進めているとのことです。

 

現場における課題を正確に把握し、改善しようという気持ちがないと、これらのような仕組みやシステムを作ることは難しいことです。実際の勉強方法は、YouTubeや動画で十分できます。状況がどんどん変化していく分野なので最短の時間で開発して試して修正する、といったことがどれだけ早くできるかが勝負です。また、修正を繰り返すので、高価な物を買うのではなく安価な物で試行錯誤を行ってください。作ったアプリを外販することで、同じ課題を捉えている同業者のコミュニティができるのも、IoTの利点です。

 

デジタル化を進めるにあたって、データを作り、つなげて、可視化・分析する機能が必要ですが、それを基に判断する機能が、最も重要です。その判断結果から、フィードバック(見直し・改善)が発生します。現場ユーザー主導の導入方法で、起点の素早い意思決定とシステムツールの試行錯誤の繰り返し、それぞれを有益に回していかないと、現場で

IoTを使いこなすことはできません。現場の課題解決への「何か」を、小さく始め、「成果」の糸口が見えたら、本格的に取り組みましょう。そうすれば、相乗効果として、社内のコミュニケーションが円滑になったり、生産性が上がったり、提案営業が出来るようになったり、外販出来たり、想定外の効果が生まれます。

 

オフィス業務を自動化するRPA編   ~RPAの活用に向けて <RPAの概要と富士通の取り組み> 

講師:富士通エフ・オー・エム株式会社 

   浅野 尚美氏

 

講演内容の要旨は以下の通りです。

RPAとは、Robotic Process Automationの略で、ロボットによる業務の自動化を指しています。ロボットとは、ツール、ソフトウェアによって自動化、効率化する取り組みの総称です。

昨今、働き方改革という政府主導の後押しがあり、少子化により働き手が減少する中で生産性を上げるには、付加価値化と効率の向上化の双方の対策が必要です。その方法として、RPAが推奨されるようになってきました。

RPAが使える作業は、ルールがあり、マニュアル化できるもの、大量・反復・単純作業、情報収集やデータ入力等、実際には請求書の作成、経費精算、人事情報の修正など複数あります。活用のメリットとしては、スピードアップ、人為的なミスの防止などから生産性の向上や長時間労働の軽減、作業品質の向上が期待できるほか、24時間365日働き続けることが可能です。また、これまで「判断すること」や、紙媒体からのデータ吸い上げなど、RPAだけではできなかった部分を、AIやOCRなど他のデジタルテクノロジーと組み合わせることで、幅広い価値の創出ができるようになってきています。

 

RPAの導入に際しては、まず全体計画をしっかりと行ってください。ポイントは「目的の明確化」と「体制作り」で、これがRPA導入の成否を決める鍵となります。「目的の明確化」は、経営者の目的を現場と共有することが必要です。目的を明確にせず導入を進めると、期待外れ感や不安感を引き起こします。「体制作り」は、現場主導と経営戦略のどちらも重要ですが、最も重要なのが推進者です。ITに長けている人に限らず、最近は若い方をRPA担当にするところも多く、現場とIT関係者と経営者の間を、円滑に回していく体制作りが必要です。また、成功している会社は、「継続していく」ということを意識しています。

 

RPAのツール選びも重要です。デスクトップ型とサーバー型があり、目的、戦略に合わせて選んでください。デスクトップ型は、PC1台ごとにロボットをインストールし現場の作業を自動化するもので、メリットは初期費用が安価なことです。サーバー型は、監視するPCを一つ作って、他のロボットの管理や遠隔操作を行います。RPAのツールは、金額面、記録の仕方、指示書のシナリオなど、いろいろな選択肢がありますので、いくつかトライアル(有償、無償あり)を試していただいて、自分の会社にあったものを選択してください。

 

RPAを利活用し代替えした事例を紹介させていただきます。

 

・ニュースをインターネットサイトから抽出し、エクセルで社内サイトにアップする作業を自動化した結果、これまで1時間かかっていたものが1分に短縮された。

・エクセルのデータを人事管理システムへ自動入力することにより、入力担当者の残業代が年間480時間削減できた。

・業務システムの移行にRPAを導入した結果、1件あたり5分の作業が1.7分に短縮されたので、職員の増員が不要となった。

・用紙に手書された申請書を取り扱うことが多い自治体が、受付窓口で数字を補記することで、スキャナーでの読み込みが可能となり、RPAで一連の業務を自動化でき、その結

 果、申請の処理にかかる時間が激減した。【OCRとの組み合わせ】

・購入依頼データをRPAが処理し、過去の担当者・取引実績を元にAIが判断、その結果をRPAが担当者登録することにより、取引が迅速化された。【AIとの組み合わせ】

・コールセンターのオペレータが対応していた工事予約受付業務を、チャットボットが応対、RPAが工事受付管理システムから空き日程を確認、それを即時にチャットボットが

 回答という形に自動化。人の負荷が軽減され、お客様を待たせることなく、24時間365日休まず対応することが可能となった。また、既存システムを改修せずに行えたため、

 開発期間とコストを抑えることができた。【チャットボットとの組み合わせ】

 

RPAの導入を考えておられる方は、「何のために(目的)」、「誰が何をする(体制)」を考えてください。まだ迷われている方も、属人化している業務や課題を、少しでも可視化しておいてください。人手不足の対応として外国人を雇用する時や、将来AI化することを見据えて、今から準備していただくことをおすすめします。

 

今回は、104名の方にご参加いただきました。ご多忙の中ありがとうございました。

 

第2回は9月2日(月)に開催します。

テーマ『医療機器ビジネスの今~播磨のものづくり力を活かして医療分野~』 →詳しくはこちら

医療機器ビジネスの仕組みや、当地の新しい動きをお話いただきますので、ご参加をお待ちしております。

 

 

 

播磨産業技術情報vol.274を8月1日に発行しました

発行物:播磨産業技術情報vol.274を発行しました(バックナンバーはこちら

Vol.274



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