ドイツのインダストリー4.0は、個の量産をこれまでの大量生産と同等のコストと能率で実現することを目指しています。
つくる物やつくり方、受発注仕様や販売方法など、これからのものづくりには影響因子が様々あります。
また、省エネ化や人口爆発などの社会問題、グローバル化やICT化といった社会環境の変化なども今後のものづくりに影響してきます。
これからの個の量産というものづくりに対応していくには、工作機械自体がより柔軟な構造形態や加工をしなければいけません。そして、化石燃料が枯渇してしまわないように省エネ化が必要となります。これらを進めるには、工作機械自体が知能化し、考える工場の核となっていかなければいけません。追及していくと、工作機械自体が見える化していないと作り進めることができず、見える化が進めば柔軟化・省エネ化・スマート化が進むという正のスパイラルが起きて、真のIoT化が進む環境ができると思います。
個の量産を目指すために正のスパイラルが進めば、最終目標の高効率の生産が実現できます。ヨーロッパではトップダウン的に見える化が進んでいますが、日本はボトムアップのものづくりで、実際の生産現場を活性化しながら見える化をやっていけば、永続的に成長していけるようなものづくり環境ができるのではないかと思います。
講師:川崎重工業 株式会社 技術開発本部フェロー(役員) 古賀 信次 氏 |
ものづくりの両輪は、生産技術と生産管理技術です。川重は生産技術を設計段階で製品に注入することで製品の差別化をする1つのツールとして使っています。もう一方の生産管理技術はコスト・納期・品質を決める非常に重要な技術です。工程設計から生産準備・生産・出荷までの流れとなります。
欧米が進めているMES(Manufacturing Execution System)は、コンピューター内に工場を作り、最適生産システムを検索し工場に指示する自立型最適工場の究極の姿で、川重はこの中の一部からコツコツ積み上げていっています。
川重のものづくりの規範は、トヨタ自動車㈱の生産方式を範としたKPS(Kawasaki Production System)です。KPSの要諦は「工程計画」「生産実行」「問題抽出」「改善施策」の改善サイクルを回すということで、帳票や記録などを保管して効率化するのがICTやIoTだと思っています。ICT/IoTは「生産状況の見える化」や「無駄の徹底廃除」などについて、正確・迅速・明瞭に具現化するツールで、それ自体が目的化することがないように留意しながら進めています。
川重の工場群は量産品から一品生産品まであり、生産形態が全く違うので、工場ごとの特質に応じたデジタル化を進め、適正な規模やレベルのスマート工場を目指しています。
ご参加いただきました皆様、ご多忙中ありがとうございました。
次回は10/24(火)を予定しています。
テーマは『今、製造現場で求められるロボットとは』で、一層の普及と市場の拡大が期待される「産業用ロボット」をテーマに取り上げます。
ご参加いただけますよう、よろしくお願い申し上げます。