第1部 概要紹介
カーボンニュートラルをビジネスチャンスへ:脱炭素経営の潮流
副所長/プログラムディレクター 小嶋 公史さん
SDGsの17の目標の一つである気候変動対策について、2050年過ぎには温室効果ガスの排出量と吸収量を差し引きゼロにする"ネットゼロ社会"の実現が世界の目標となっていることと、その対策として世界各国で脱炭素経営が推進されている現状を説明し、その上で、中小企業もこの問題に真剣に向き合わなければ経営上大きなリスクになると警鐘を鳴らすとともに、将来的には気候変動以外の目標に関しても協力が要請される可能性があるので、SDGs全体を視野に入れた経営戦略が重要となります。
脱炭素経営の具体策としては、次の3つを提示。1つ目は、企業の気候変動への取り組みを開示する提言「TCFD」への賛同を表明すること。2つ目は、科学的な中長期の目標設定「SBT」の認定を取得すること。3つ目は、事業活動に必要な電力を100%再生エネルギーで賄うことを目指す企業連合「RE100」に参加すること。これらにより、財務情報以外も考慮して投資する「ESG投資」においての企業価値が高まり、ビジネスチャンスが広がるはずです。また、脱炭素経営では、自社が排出する温室効果ガスだけでなく一連の事業に関わる全ての排出量「サプライチェーン排出量」や、一つの製品について原材料の調達からリサイクルに至るまでの排出量をCO₂に換算して製品に表示する「カーボンフットプリント」の視点で考えるのが大切になります。
さらに、排出したCO₂を価格付けし課税する「カーボン・プライシング」に注目。日本もいずれは世界水準に合わせた価格設定により制度化されると推測されるが、現段階では企業が独自にCO₂の価格を決める「インターナル・カーボンプライシング」を基に取り組むのが賢明と考えます。
第2部 支援制度紹介
中小事業者様のカーボンニュートラル支援
ひょうごカーボンニュートラルセンター副センター長 小塩 浩司さん
今後は中小企業も、取引先や融資を受ける金融機関から環境に配慮した「環境経営」が求められる状況を踏まえ、それに役立つ主な支援事業を紹介します。1つ目は現地調査・診断を基にアドバイスを行う再生可能エネルギー相談支援センター」のサービス。2つ目は建物の省エネ化や再生可能エネルギー設備の設置費用の補助金制度。3つ目は中小企業でも容易に取り組める環境マネジメントシステム「エコアクション21」の認証・登録制度。加えて、新たな支援策として昨年7月に立ち上げた「オンサイトPPA事業」も紹介します。初期費用ゼロで太陽光発電設備が設置でき、使用した電力分のみ固定価格に基づき支払うという画期的な制度です。
最後に、今後導入を予定している温室効果ガス排出量算定に係る費用の助成制度を紹介。これらをうまく活用することで中小企業においても環境経営を効率的に進めることができます。