第1部 生産性向上事例
三菱電機のIoTによるものづくり
機器第三部FAソリューション課 担当課長 長谷川 利顕さん
製造業のIoT化に向け世界中で様々な動きがあり、日本においても、データ収集技術をはじめIoT・AIによるデータ活用が進展しています。
三菱電機は、生産現場とITシステムをスムーズに連携させ支援するソリューション「e-F@ctory」を2003年に提唱し、現在、日本・欧米などで3万5千件以上が導入されています。「e-F@ctory」は①データ収集し可視化する「見える化」、②一次処理(エッジコンピューティング)・分析する「観える化」、③改善のための「診える化」の、3つの「見える化」をキーワードに構成されています。その「e-F@ctory」の導入事例として、「実装設備の停止原因が不明で稼働率が上げられない」という課題に対し、実装機の稼働データを収集する面実装管理システムを導入し、可視化。その結果、停止原因に対し効果的な改善を行うことで品質ロスを50%ダウン、生産性は30%アップを実現しました。
IoTの目的は省人化や生産管理など様々で、どこから手を付ければよいかわからない、投資判断が難しい、とよく聞きます。そこでIoT化の進め方としてSMKL(SMART MANUFACTURING KAIZEN LEVEL)を提案します。SMKLとは16個のマスで表す、製造現場の見える化/IoT化がどの段階まで進んでいるかが判断できるシンプルな評価指標(物差し)の一つです。これにより、工場のIoT化成熟度を評価し、設備改善の方向性を検討することができ、また設備投資ロードマップとして活用することで計画的な投資判断ができるようになります。
最後になりましたが、IoTが目的とならないように、何のためにするのか、目的を見極めた上での導入をお願いします。
第2部 中小企業の活用事例
経営者が知っておきたいIoTやAIの「使いどころ」
~全国中小企業のIT活用事例から学ぶ~
IT経営マガジン「COMPASS」編集長 石原 由美子さん
「DXの時代」と言われますが、IT活用は、課題を乗り越えて経営を軌道の載せる、儲けるために行います。
IoTやAIの活用においても、技術に気をとられる前に、まずは自社の課題がどこにあるかをチェックすることから始めましょう。人が介在せずともデータを取得・蓄積したり、所定の動作を自動で行えるのがIoTです。例えば機械の稼働時間や作業時間を自動記録したり、設定した状況になるとランプを点灯させたりできます。AIは、人が条件を設定せずとも、過去の例を学習した人工知能が判別や予測を代行します。製造業では、不良品の識別などの外観検査、数量のカウントなどによく利用されています。
中小企業の取り組みとして、次のような活用事例もあります。①多品種少量生産で適正利益を確保するため、生産計画の自動スケジュール化を行いました。各製品の製造プロセスと必要なスキルを明確化。システムが各社員のスキルとマッチングして最適なスケジュール化を行います。②保育園にて、乳児のうつぶせ寝事故を防ぐために、映像で見守りるシステムを開発しました。一定時間動きがないなど設定した状態(危険に近づく状況)を察知すると赤ランプ等で知らせ、乳児と保育士の双方をサポートしています。③中小企業自らがAIサービスを開発する例もあります。油圧装置を手掛ける企業では、AI外観検査システムを開発。製造現場を知る強みを活かし、新規事業を展開しています。
このように、パッケージ化されたサービスも出てきているので、探してみるのもお勧めです。ただ、こうした最新のIT技術も「人」が使いこなしてこそ結果が出ます。また、IT活用の一歩は、課題意識を言葉にしてみることから。支援機関やITコーディネータ等の専門家に相談するのも有効です。