第1部
中小企業におけるデジタル(AI、IoT等)の活用と実践事例
公益財団法人ソフトピアジャパン 理事長
松島 桂樹 氏
中小企業にIoTを導入すると、現場と利益の見える化につながり、明らかに経営効果が現れます。
IoT化によるテレワークは新しい経営や生産性向上を生み出す可能性を有しており、コロナ禍の中、営業活動が対面でできなくても、自社のホームページを見直し、クラウドやチャットポットの利用状況を把握することで、マーケティングでの攻めに転じる製品サービス戦略に活用することができます。
また、製造現場において、身近なスマートフォンを活用したIoT導入例として、加工機の駆動部にスマートフォンを付けることで、駆動回数・時間などのデータが自動的に送信され、加工作業の状況管理・報告を容易にかつ遠隔で把握でき、データ、利益の可視化により、工程改善や価格交渉なども可能になりました。
IoTの導入の第一歩は、無料で簡単、即効果がわかるスマートフォンなどを活用することが重要です。
中小企業の大きな課題である事業承継についても、イノベーションのチャンスととらえるべきで、人手不足や技能伝承をデジタル化で解決することです。
近年、受発注企業間や製造メーカーと物流業者間などが、データ管理や経費削減など利点が多いEDI(電子データ交換)をでつながるほか、AI品質検査サプライチェーン・セキュリティを用いて品質保証を企業間連携で行うなど、革新的なデジタル技術の活用が推進されています。
サプライチェーンの末端の中小企業がデジタル化を行うことで、デジタル化のメリットを皆が享受できるよう日本全体で取り組んで行きましょう。
第2部
実話!中小企業のデジタル奮闘記
~お金もない!人もいない!でも、やりたいデジタル化
デジタル化の道のりとその我慢点と譲れない点、生々しい詳細を公開~
株式会社 O2 代表取締役社長CEO
松本 晋一 氏
株式会社IBUKIは、射出成形金型の設計・製造会社で、リーマンショック後、倒産寸前で社員数は激減の危機に陥りましたが、DXに取り組んだ結果、業績がV字回復しました。
当社ではまず、作業ゼロ・紙ゼロを目標に、社員証をかざすだけの勤怠管理、ホワイトボードにある社用車のスケジュール管理などのデジタル化から始めました。
その後、人がやらなくてもいい単純作業はシステム開発を内製化し、「DenDen Mushi」という基幹システムを構築しました。受注・工程・金型・購買・不良・勤怠・各種申請の管理をはじめ、財務管理まで一貫したシステムで、帳票はバーコードかQRコードで認証し、データを共通仕様することで一連の業務の自動化につながりました。システムは、よく知られたExcelを元に作成されているので、社員への新しい教育はほとんど必要としません。
また、熟練者知見のメカニズムを可視化することにより、不具合の事象や基準が認識され、AIを活用した解析技術にも活用できるなど、ノウハウが技術継承されました。
DXを進めることによる経営効果を考える際には、生産性などを”上げる”ことではなく、工程やコストなどを”減らす”ことや”下げる”ことを目的に、あえて不景気や閑散の時期に取り組むことが重要です。その際、可視化によって、やり方を統一し標準化する、そしてデジタル化することで自動化する、という順序が大切です。
最後に、経営者の役割として、デジタル化に消極的な社員からデジタル化に取り組む社員を守るGuardian(守護神)となることが求められます。