第1部
ヒトではなく、電子を走らせろ。電子は疲れない
~「ヒト×ヒト」経営から「ヒト×デジタル」経営へ
インタストリーバリューエンジニアリング統括本部
IoT/IR4 ディレクター 村田 聡一郎 氏
これまで人間が行っていた業務を、ITやインターネットなどのデジタルツールに分担させることでGDPの成長を遂げた国は少なくありません。日本においても、労働力の減少などの現状を鑑みればデジタル技術の活用が不可欠であると言えます。 従来の「IT投資」とは、ヒトが行う業務プロセスに部分的にITを投入するといった改善でした。今回ご紹介するデジタル・トランスフォーメーション(DX)とは、ヒトが行う業務プロセスを、デジタル前提の新しい業務プロセスと入れ替えることです。例えば、以前は「写真を撮って遠方の人に送る」には、カメラで撮影して、フィルムを現像し、写真を郵送するという流れでしたが、現在は、スマートフォンで撮影したものをインターネットに上げれば完了します。更に、これらがほぼ無料で行えます。このように、デジタルツールは、初期投資後は低コストで、超高速、超大容量、更に24時間365日稼働可能です。
企業でのDX事例を紹介します。
ある中堅の製造業社は、DX化により業務分担の明確化、情報の共有、部署間の連携や課題解決、更には管理会計や原価分析まで可能となりました。
また、建設機械のレンタルを行う企業では、事務職の社員が、建機の免許取得後3日間で、ICT建機を使ってベテランでも難しいとされる法面成形を完成させたという事例もあります。
DXは、企業の生産性を向上させ、人の暮らしを豊かにします。ぜひ活用してください。
第2部
事例で理解 中小製造業版「DXのすすめ」
代表取締役社長 林 万美子 氏
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用した単なる業務改善にとどまらず、経営を変革し、企業価値を高めていくことです。DXの取り組み事例として、アスカカンパニー㈱の画像検査統計情報システム「MyCiS」の開発と活用を通じた経営変革を紹介します。 アスカカンパニー㈱は、衛生用品、食品などのプラスチック容器を製造する会社です。42年間にわたり年2回、全社員参加によるQC活動※を行っています。MyCiSはカメラ検査を導入したことをきっかけとしてQC活動で開発したソフトウエアです。カメラ検査を不良の排出だけでなく、不良の抑制につなげるために、検査結果のデータを活用し、不良品の発生状況の可視化と情報共有を行うシステムです。このシステムをきっかけとして、製造現場が主体的にデータを活用するようになり、不良やクレーム件数は大幅に減少しました。データを元に品質を管理するという風土は、企業価値向上に確実に貢献しています。アスカカンパニーで得たこれらの知見や経営手法を同様の課題を持つ企業に広めるため、システム企画・販売コンサルティングを行う(株)アスカコネクトを設立し、活動を行っています。
中小製造業のDX実践は、難しいと考えられがちですが、高度なデジタルツールを導入するよりも、経営者のリーダーシップや改善・変革に取り組む企業全体の姿勢が、より重要と考えます。まずは、自分たちの現場に即したデジタルツールを導入し、小さな改善を積み上げる事からスタートしてはいかがでしょうか。
※ 職場単位で、小集団のサークル(活動チーム)をつくって、科学的に品質を管理し、改善に取り組む活動