第1部
1時間で始めるスマートファクトリー
(i Smart Technologies 株式会社)
代表取締役社長 木村 哲也 氏
トヨタ自動車株式会社の生産調査部では生産方式を習得実践し、2013年自動車部品を製造する旭鉄工株式会社に転籍し、16年代表取締役に就任。「IoTを使ったモニタリングシステムを自社開発して生産性改善に活用したところ、高い効果を上げることができました。
トヨタ生産方式に則って改善を行う際、まず生産個数、稼働時間、トラブル等による製造機械の停止時間を記録し、1個の生産に係る時間(サイクルタイム)を割り出して、現状の生産効率を把握します。しかし、同社では正確な測定のための人材が不足していたため、IoTを活用してデータを自動で収集し数値を可視化するモニタリングシステムを自社開発することに。製造機械の役半数はインターネット接続に対応していなかったので、加工完了時に消える信号灯に光センサーを取り付けるなど、現場にあった手法で必要なデータを集め、モニタリングシステムを構築していきました。
稼働状況はスマートフォンなどでいつでも確認でいるようにし、データを従業員と共有。ビジネス用チャットツールや、音声で操作できるAIアシスタントなども積極的に取り入れました。「毎日、従業員とモニタリングデータを使ってミーティングし、成果が出ればしっかりと褒める。すると、自主的に改善に取り組むようになり、会社の風土も変わっていきました。」80ラインで平均1.34倍、最高2.3倍物出来高向上を実現。増産のための設備投資削減や残業時間短縮を実現。会社全体の労務費の年1億円以上の削減や品質向上にもつながったと成果を報告しました。
この技術を他の企業でも役立てたいと2016年に i Smart Technologies株式会社を設立。システムをクラウド上のソフトウェアとして提供し、データの分析、改善活動の指南を手掛け、今までに 180社のモニタリング一隻があります。お客様のラインでも稼働率(動く割合)が導入4ヶ月で平均47→59%と大きく向上しています。「成果の出る企業とそうでない企業の違いは、データを見て、共有して、改善に活用できているかどうか。データを収集するだけではなく、現場で使う仕組みを確立することが重要。
第2部
IoTを活用した工作機械の新たなビジネスモデル
取締役社長 博士(工学) 森 雅彦 氏
金属、樹脂などの素材に切削、研磨などの加工を施して機械部品を製造する工作機械の加工技術は、施版、マシニングセンタ、5軸加工機、アディティブ・マニュファクチャリング3Dプリンティング)など、10年ごとに技術革新が起こっています。今は1台であらゆる機能を併せ持つ機械が主流となってきており、工程分割から工程集約へと変わりつつある。技術的課題として、人が介在しない機械制御の領域が広がり、プログラムによる自動加工になるほど、対象となる機器の精度が良くならなければならない。
また、当社は、工作機械への素材の投入や加工した製品の搬出などを産業用ロボットが行う生産ラインを構築し、生産性向上と省人化を実現する「自動化」を進めています。工作機械とロボットを組み合わせた大規模自動化システムのイメージ動画を紹介し、これからは、工作機械の領域にとどまらず、顧客の工場にまで目を向けてニーズを掘り起こしていく必要があります。
自動化が進むと、生産ライン上の機械をインターネットでつなぎ一元的に管理するIoTの活用は不可欠となるため、機械の稼働状況や保全情報を確認でき、遠隔操作によるメンテナンスなどのサービスも可能なソフトウェアを開発。「自動化の次行を含めると、現在世界で7,8兆円ほどのマーケットが15~20兆円になる」と市場の拡大を見据え、製造業の新たなビジネスモデルである「スマートファクトリー」の実現を推進していく構えです。
「自動車や航空機器、半導体などさまざまな分野で技術革新が起こる中、求められる専門的な知識や技術の変化を感じています。技術男多いな変革を起こそうと思えば、どこかの会社がリスクを負って世間に普及するようなことを進めていかなければならない、と、創業70周年に当たって5軸加工機70台を全国に1年間貸し出す活動を開始しました。貸し出しに際し、オペレーター養成のために30回講師を派遣してのプライベートレッスンも行っており、中小企業の製造現場にイノベーションを起こしたいと思います。