ICTが自動運転を実現しヒトとモノの移動を変え、産業構造を変革する
ICTとクルマはあまり相性がよくありません。
なぜかというと、ITとクルマのライフサイクルの違いがあり、ITは3~5年で世代交代していくのに対し、クルマは3年間新車として販売しています。売っている間にITが古くなり、アップデートするにも古いものに新しい技術を入れるのは難しいのが事実です。しかし、1970年頃より半導体が車を支援するようになり、現在の車はナビゲーションの浸透など以外にITが入り運転を支援しています。今後もカメラやレーダーなどのセンサーが付き、クルマが周囲の環境を把握することにより、ディープラーニングで走行アルゴリズムを生むことができます。そして、走行アルゴリズムをコンピューターにダウンロードすれば、自動運転車となります。
1964年頃には半導体が生まれ、2010年にはほとんどのパソコンがインターネットを経由してクラウドにつながる状態になりました。現在では手持ちの情報端末であるスマホも当然のようにクラウドにつながっており、状況は急激に変化しています。パソコンやタブレットなどいろんなデバイスがありますが、ハードウェアは何でもよく、目的に応じたものがインターネットとして使えれば機能する状況になっています。ネットワーク化された端末の先にあるサーバーは人間の脳以上の計算力を持っており、2020年以降、デジタルの時代から人工知能の時代になるのではと考えられています。
2014年頃より配車アプリである「Uber(ウーバー)」がグローバルに展開していますが、最近では自転車やキックボードのようなスクーターのシェアリングが急速に発達しており、移動を最適化しようというのが生まれています。これはMaaS(マース:Mobility as a Service)と呼ばれています。MaasSはデータセンターに3次元地図であったり、走行アルゴリズムを作ったり、デリバリーする運行管理、どこに最適な手配をするのかというような要素を持ち込むことで成功しました。どれだけシェアリングが進んでいるかというと、欧米に比べて中国の浸透率が高く、その背景には先進国では車は自己実現と関連する商品であることに対し、新興国では所有する気持ちが少なく、シェアリングからクルマの乗車という体験を作り上げます。今後、新興国や発展途上国でのシェアリングが増えるので、シェアリング対象の車を作らなければいけませんし、シェアリングをするならオペレーターをつけないと誰も乗れない、まさにMaaSのようなものをつけて車を作りこみ売らなければいけないということです。
ディープラーニングのおかげで画像認識と深層強化学習が発達し、海外では人間とコンピューターの運転権限移譲を交互に行うレベル3よりも、最初から最後まで人間が介在しないレベル4の方が現実性が高くなっています。レベル4というのはほとんどEVで実現し、完全自動運転なのでハンドル・アクセル・ブレーキは付けません。また、個人へ販売するのではなく、モビリティ事業者への提供や、自身がモビリティ事業者になることを各クルマ会社が発表しています。レベル4が実現すれば、タクシーがドライバーレスになったり、人の利用が少ない時間は貨客混載となったりし、人件費や輸送コストが下がります。他にもいろいろなサービスを融合し組み合わせることによって、ドライバーレスタクシーを低価格で提供することが可能です。
1人1台で1時間しか乗らなければ稼働率は4%ですが、シェアリングすれば10倍乗られ稼働率は40%になり、10倍走ります。今、10万キロ程で廃車になるとすると、1~2年で車が商品サイクルを回すということです。スマホビジネスと同じような商品サイクルとなり、このような形で実装されると新しいサービスをどんどん入れることが可能となります。そのような意味では、ようやくICTとクルマの悪かった親和性が高くなると思います。クルマ産業というのはアナログなので製造能力が高い事業です。しかし、webの事業はデジタルなので、コピーすれば品質劣化せずに生産でき、製造に利益が生まれにくくなります。ユーザーと対面し分析することで機能性を強化し、ソフトウェアを書き換えアップデートするというのが重要です。これがモビリティサービスと一緒になると、今までクルマ産業のピラミッドでトップにいたクルマ屋さんですが、ユーザーのことが見えているプロバイダーがトップとなり、技術を実現する会社の下となるサードレイヤーとなってしまいます。したがって、自身のサービス事業替えが重要になってくるといえるでしょう。
これはほかの産業にも言えることだと思います