第1部
ものづくり企業の医療機器ビジネスへの参入
医療機器事業化コーディネーター 佐藤 純一 氏
医療機器市場の特徴は2つあり、1つは高額な医療機器などは輸入が多く、輸入超過です。もう1つは、景気の影響を受けにくく安定した市場といわれています。2005年と2015年の大きな法改正では、新たな企業の医療機器産業への参加や医療機器の安定供給が期待されており、今後は高齢化により市場の拡大も見込まれています。
医療機器には治療機器や診断機器の他、コンタクトレンズや手袋など様々で、医療機器のみに使われる技術はありません。どういうところで使われているか見出されていないため難しいとは思いますが、普段の事業で持っている得意な技術が応用できる可能性があるということです。新規参入にあたっては、人の疾病の治療、診断などに使用するため、生命に関わる機器であることを認識し、法に関する理解を深めていかなくてはなりません。そして、自分たちの得意技術を軸に、事業スタンスを明確にすることが重要です。医療機器に携わるためのライセンス許可までの時間や、製品認可までの時間など、モノが出来ればすぐに市場に出せる普通のプロジェクトより時間が必要であるため、中長期的視線でマネジメントを行うことが重要ではないかと思っています。
第2部
衣料から医療へ「下町ロケット2」❝リアル❞ガウディ計画への挑戦
代表取締役社長 髙木 義秀 氏
福井経編興業は、繊維の産地である福井県のニット生地製造業で、カーシートや衣料品生地を製造していました。しかし2000年頃より、大手商社の繊維部門が海外移転していき、福井の繊維産地はどんどん衰退していきました。そのような環境の中、企業の生き残りのため 「加工立国・日本」のものづくりの気持ちで、機械が一番苦手とする天然繊維で生地を編むことに成功しました。輸出を増やそうとパリの展示会に出展するというグローバル戦略のおかげで、後日シルクでの人工血管開発を東京農工大学の教授から依頼され、メディカル部門への進出となりました。人工血管は2010年から現在も開発中ですが、シルクの繊維に細胞が入り込むことを学びました。そして次のステップが、子どもの心臓オペに使用する心臓修復パッチの“リアル”ガウディ計画です。髙木氏がメディアに出ていたことがきっかけで、大阪医科大学の教授よりMade in Japanの医療機器が何かできないかとの相談からが始まりでした。製品化し輸出していくために2017年5月には医療機器用のISO13485を取得し、クリーンルームも作りました。早くそこでパッチを作りたいと思っています。
何年もかかる開発にはお金も人も必要です。福井経編興業は国から多額の支援をいただきましたし、社員雇用のため今のうちから企業に関心を持ってもらう手立てをメディアで扱っていければと思っています。