第5回 ものづくりシンポジウム

第1部
水素社会の実現に向けた最新動向について

岩谷産業株式会社
  上級理事
  中央研究所 副所長 繁森 敦 氏

当社は、戦前から産業用ガスとして水素の販売を開始し、その後も国内初の商業用液化水素プラントや燃料電池自動車に水素を供給する水素ステーションを建設するなど、エネルギーとしての水素の普及にもいち早く取り組んできました。


究極の循環型クリーンエネルギーともいわれる水素の特徴は、「地球上に大量に存在する」「燃焼しても水素自体はなくならず水に戻り、二酸化炭素を排出しない」「電気と違い、貯蔵や持ち運びが可能である」こうした点から水素は、経済産業省がエネルギー政策の基本的視点に掲げる「3E+S(エネルギーの安定供給、経済効率性の向上、環境への適合+安全性)を達成するエネルギー源として期待されており、エネルギー自給率が著しく低い日本において、水素の生産から流通、エネルギーとしての消費までが根付く「水素エネルギー社会」を実現させることの重要性と意義を示しました。


しかし、水素は燃焼時にCO₂排出しない物質として知られているものの、製造方法の過程でCO₂を発生する場合があり、水素を安定に生産でき、かつCO₂排出量を抑えられる製造方法が実用化にいたるまでには技術的・経済的課題が山積しています。水素を燃料として使用する燃料電池自動車(FCV)の普及も十分ではなく、国内約90ヵ所で可動している水素ステーションの建設費用や運用のコストに見合っていないという現状もあります。水素の製造や輸送、貯蔵の分野などではまだまだ技術開発の課題があり、水素の需要バランスを確立するためには、水素を地産地消する仕組みづくりや、国外での製造・輸送など海外とも連携して研究を進めることで水素社会が最終的に実現できるでしょう。



第2部
燃料電池自動車MIRAIの開発と水素社会実現に向けたチャレンジ

トヨタ自動車株式会社
  Mid-size Vehicle Company
  MS製品企画 チーフエンジニア 田中 義和 氏

化石燃料の大量消費による石油供給の将来的不安や地球環境への影響など、自動車を取り巻く現状を踏まえ、当社の環境技術に対する基本スタンス「省エネルギー化」「燃料多様化」「エコカーは普及することで環境貢献できる」の3つを揚げ、エコカー開発の歩みと水素エネルギー社会の実現に向け取り組んでいます。


当社は、1997年に内燃機関(エンジン)と電動機(モーター)を備えたハイブリッド自動車(HV)を販売以来、改良を重ね、低燃費、価格減、用途に合わせた豊富なバリエーションを打ち出してきました。また、石油燃料以外の、バイオ燃料や電気など近年の自動車燃料化に対しては「石油代替燃料の特徴はいずれも一長一短であり、国や地域によってエネルギー政策も異なる」と、全方位での開発に取り組んでいます。電気自動車(EV)やプラグインハイブリッド自動車(PHV)を次々と展開しながら、今後も優位を保つと予想される石油燃料を併用しつつ、代替燃料へと転換していく姿勢を提示しました。

2014年に発売した「MIRAI」は、水素と空気中の酸素の科学反応によって生じる電気でモーターを駆動し、走行するFCV。


1992年~研究に着手し、世界トップレベルの体積出力密度を誇る燃料電池、水素を安全に貯蔵する高圧水素タンクなどを自社開発し、モーターの床下搭載による低重心で前後のバランスのいい車両を作り上げました。MIRAIは水素のための新しいインフラを必要とするため、これまでにない活動をしてきました。


販売の1年以上前に実施した先行車の公開試乗会や、その半年後に行った開発進捗報告会での販売タイミングや価格イメージの公表は、インフラの整備や政府の政策整備を促す狙いがあったといいます。また、燃料電池の安全性への不安を拭い去るため、代表取締役の豊田章男社長が自ら全日本ラリーで乗車し、信頼性の高さをアピール。さらに。FCV関連の特許の無償化に踏み切り、新技術を公開し、「競争よりも、まずは広げていくための『仲間づくり』を優先されることが大切」と水素社会の早期拡大をめざす姿勢を見せました。


昨年1月には自動車メーカー。エネルギー事業者など13の国際的企業のリーダーが協議会を設立し、水素社会の実現を共同で推し進めることを合意。


「技術は使うことで発展していきます。時間はかかるかもしれませんが、FCVの普及を通じてモビリティ―の革新と水素社会の革新に挑戦していきたい。」



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